不倫慰謝料を請求された方が最初に読むページ|初動対応・相場

公開: 更新:
不倫慰謝料を請求された方が最初に読むページ|初動対応・相場
この記事は、不倫の慰謝料を請求された方に“最初に読んでほしいページ”として作成しました。請求された直後の対応や、慰謝料を支払う必要のないケース、慰謝料の相場などをご紹介します。

はじめに -当事者の呼称-

この記事では不倫の慰謝料に関する当事者を以下のように呼称します。

呼称 立場
ご相談者様 不倫の慰謝料を請求された方。この記事の想定読者。
交際相手 ご相談者様が関係を持った相手。相手との関係性によっては他の呼称(遊び相手、上司/部下、店員さん/お客さんなど)の方が適している場合がありますが、この記事では便宜上、交際相手に統一しています。
相手配偶者 交際相手の配偶者。不倫の慰謝料を請求した方。

初動対応

慰謝料を請求されたら、まず何に注意すべきか?どう対応すべきか?
ここでは初動対応についてご紹介します。

やり取りにおける注意点

相手配偶者や弁護士とのやり取りにおいては、不用意な発言を避けて、何を事実として認めるか、何を約束するかを慎重に判断しましょう。

肉体関係の有無や交際期間などの事実について認めたり、支払う慰謝料の金額を約束したりすると、原則として、これを後で覆すことはできません。特にメールやSNS、書面などの手段で連絡した場合はやり取りが形として残りますし、面会や電話で話した場合も会話内容は録音されている可能性があります。この場合、後に「言っていない」とすることはとても難しくなります。

よく検討したい場合は無理にその場で回答する必要はなく、「改めて回答します」と伝えて差支えありません。

なお、交際相手とのやり取りにおいても注意すべきことは同様です。会話内容が録音されているかもしれない、または、メッセージが相手配偶者に見られるかもしれないことを念頭に置いておきましょう。

交際相手の配偶者や弁護士から書面が届いた

交際相手の配偶者や弁護士から届いた書面は、

  • ××万円を振り込んでください
  • 期限までに振込/返答がない場合は訴訟提起(裁判)を検討します

という内容が多いものと思われます。

金額について

お手元の書面に記載されている金額は、あくまでも相手の求める金額です。その通りに支払わないといけないわけではなく、減額の余地があります。また、そもそも支払い義務があるのか?から検討すべきで、なかには法的には支払い義務を負わないケースもあります。

期限/法的措置について

期限までに振り込まなければ(または、期限までに支払える金額を返答できなければ)、必ず裁判を起こされるのか?というと、そうとは限りません。加えて、事前に連絡して「検討するから待ってほしい」「弁護士に相談するから待ってほしい」と伝えることで、すぐに裁判を起こされる可能性は低くなるでしょう。

なぜなら、裁判を起こすことは、相手配偶者にとっても時間とお金が余分にかかってしまうため、相手配偶者にとっても、裁判をせずに解決ができるのであればそちらの方が望ましいと考えるのが一般的です。
もちろん、嫌がらせなど、裁判を起こすこと自体を目的とする方もあり得ますが、そのような方は最初から猶予を設けず裁判を起こすのではないでしょうか。初めに書面が送られてきたということは、少なくともご相談者様の相手配偶者は、そうではないと推察できます。

もっとも、相談者様が何も返答せず期限を過ぎて、その後の連絡にも対応しなければ、相手配偶者としては裁判を選択せざるを得なくなります。

面会を求められている

相手配偶者から会って話すことを求められたとしても、必ず応じなければならないわけではありません。

面会では不倫の事実を確認され、慰謝料についても話に上がると思われます。ということは、双方の合意次第ですが、その日その場での解決を期待できるということです。一方で、感情的な衝突が起こるリスクや、不利な条件で合意してしまうリスクは否定できません。このように、面会を通して期待できることや想定されるリスクを考慮して、何を重視するかによってお決めいただくことをおすすめします。

なお、面会する場合は次の2点にご注意ください。

(1)会う場所

「お金の支払いを約束するまで帰さない」「この書面にサインしなければ帰さない」と言われ、不利な内容で合意してしまうケースがあります。これを避けるため、人目のある場所で面会することをおすすめします。

(2)発言内容

会話は録音されている可能性があります。発言が証拠として残るかもしれないことを念頭に、何を事実として認めるか、何を約束するかを慎重に判断しましょう。

家族や職場にバレないようにしたい

残念ながら絶対にバレないようにする、という方法はありません。どれだけ誠意を持って対応したとしても、例えば相手配偶者が突然自宅や職場を訪ねてくることはあり得ますし、このような他人の行動は止めようがないからです。

もっとも、(相手配偶者やその弁護士のモラルによりますが)相手側からの連絡にきちんと対応していれば、周囲に知られることはあまりありません。そもそも、周囲に知られるきっかけとして多いのは「連絡がつかないからやむを得ず自宅に書面を送る/職場に連絡する」というケースです。通常は相手配偶者も不必要に第三者に不倫の話を知られたくないわけですから、連絡に丁寧に対応している限り、家族や職場に知られることは稀だと思われます。

なお、弁護士を立てると弁護士が連絡窓口になるため、原則として自宅に書面が届くことはなくなります。ただし、このような扱いも結局のところ相手側のモラルに委ねられています。また、裁判を起こすための訴状の送り先は、原則として訴えられる人の住所とされていますので、原則ではない場所(弁護士の事務所)に送るかどうかも、同じく相手側次第です。

周囲に知られにくくする方法はありますので、早めに弁護士にご相談ください。

そもそも支払う必要はあるのか?

「不倫をした=必ず慰謝料を支払わなければならない」というわけではありません。慰謝料の支払い義務を負わないケースも存在します。これをご説明するため、まずは慰謝料の支払い義務が発生する要件について掘り下げます。

慰謝料の支払い義務が発生する要件

交際相手との一連の交際が『不貞行為』であり、相手配偶者への『不法行為』となることが必要です。言い換えると次の4点が原則的な要件となります。

慰謝料の支払い義務が発生する要件
  1. 自由な意思によって
  2. 肉体関係を持った
  3. 故意または過失がある
  4. 交際が始まる前、交際相手の夫婦関係は破綻していなかった

これらを全て満たす場合に、慰謝料の支払い義務を負うこととなります。

慰謝料の支払い義務が発生しないケース

先述した要件の裏返しが、慰謝料の支払い義務が発生しないケースです。つまり、

  • 肉体関係を持ったが自由な意思ではない
  • 肉体関係を持っていない
  • 故意も過失もない(注意していても、交際相手が既婚者であること/夫婦関係が破綻していないことに気づく余地がなかった)
  • 交際が始まる前から、交際相手の夫婦関係は破綻していた

これらのうちどれかに該当する場合、原則として慰謝料の支払い義務を負いません。

こんな場合は支払わないといけない?

しつこく誘われ、断り切れなかった

要件①に該当する可能性はあります。

自由な意思ではないという理由で支払いを拒める可能性があるのは「世間一般的に、相手の求めを拒否することが困難であろう」といえる事情がある場合です。具体的には…

  • 暴力や脅迫によって肉体関係に応じざるを得なかった
  • 社会的地位を背景に肉体関係を強いられた

など、客観的に見て「断れなくても仕方ない」といえるほどの事情を指します。

これに対して、単にしつこく誘われて断り切れなかったのであれば、きっかけは交際相手の再三にわたる誘いかけだったとしても、最終的には自由な意思によって応じたことになり、要件①に該当します。

ただし、断り切れなかったことを示す行動(証拠)があれば反論の余地があるかもしれません。どのような事情をもって「断れなくても仕方ない」といえるかは個別の事情によって異なりますので、お気軽にご相談ください。

肉体関係なし

肉体関係がなければ要件②に該当しないため、慰謝料の支払い義務は原則として発生しません。

もっとも、慰謝料の発生要因となる行為の典型例は肉体関係ですが、肉体関係のみに限られているわけではありません。肉体関係には至っていなかったとしても、その行為がされた背景、場所、具体的な事情のもとにおいては、相手配偶者を傷つけたということで、慰謝料の支払い義務が発生する可能性があります。

例えば、既婚者の男性と交際相手の女性が同居していた事案で、肉体関係の有無に関わらず、同居したこと自体が不貞行為に該当すると判断された裁判例があります(東京地裁 令和3年(ワ)第13322号)。このように肉体関係はなくても相手配偶者を傷つける行為があった場合は、慰謝料の支払い義務を負う可能性が0ではないということです。

既婚者だと知らなかった

客観的に「独身だと信じてもやむを得ない」といえるほどの事情があれば、要件③に該当しないことを理由として支払いをしなくて済む可能性があります。

「独身だと信じてもやむを得ない」かどうかは、知り合った経緯や交際の態様、双方の年齢などを総合的に踏まえて判断されることになりますが、ここで重要なのは、内心(知らなかった、独身だと思っていた)ではなく、事実だということです。

事実とは例えば…

  • 婚活目的のマッチングアプリで知り合った
  • 交際期間が短い
  • 曜日や時間帯を問わず頻繁に連絡を取ったり会ったりしていた

このような事情が積み重なれば、「独身だと信じてもやむを得ない」という判断に近づくでしょう。

反対に、

  • 土日は仕事が休みのはずなのに会おうと誘っても断られ、会うのはいつも平日だった
  • スマホのデータフォルダに子どもと撮影した写真があった
  • 既婚者なのでは?と疑うような出来事があったが、それを交際相手に確認しなかった

このような、既婚者ではないかと疑いが芽生えるような事情があれば、またはそれを確認しなかったのであれば、故意または過失があった(慰謝料の支払い義務がある)という結論に向かいやすいといえます。

交際相手から独身だと聞いていて、注意していても既婚者であることに気づく余地がなかった場合、請求された慰謝料を減額するだけでなく、貞操権(性的自由)の侵害による慰謝料を交際相手に請求できるかもしれません。詳しくはご相談ください。

離婚する予定/夫婦関係は破綻していると聞いていた

客観的に「離婚する/破綻していると信じてもやむを得ない」といえるほどの事情があれば、要件③により慰謝料の支払い義務は生じないこととなります。

ただしそのハードルは高く、幣事務所の肌感覚としては、先に述べた[既婚者だと知らなかった]場合よりも、慰謝料の支払いを免れる可能性は低いと思われます。

なぜなら、不倫関係を持とうとする者が、離婚する予定/夫婦関係は険悪だと言うことは、相手の歓心を惹くための常套手段であって、これは一般的にも裁判所にも認識されているからです。

この認識を前提として、既婚者と関係を持つ者には、本当に離婚するのか?本当に破綻しているのか?と充分に注意することが求められているのですが、その裏付けとなる事情は、そうあるものではありません。むしろ、

  • 離婚すると言いながら、離婚に向けた話し合いは進んでいない
  • 家族で一緒に外出したり、旅行に行ったりしている

これらのように、夫婦関係が破綻していないことを示す事情の方が一般的には多く、「離婚する/破綻していると信じてもやむを得ない」と客観的にいえることは稀だと思われます。

なお、本当に「交際相手の夫婦関係は破綻していた」のであれば、要件④により支払い義務を負わないことになりますが、これも同じく、客観的に認められるケースは数少ないと思われます。

時効

先述した要件を満たしていても、時効を迎えている場合、相手配偶者は慰謝料を請求することができません。原則として、相手配偶者が持つ慰謝料の請求権の消滅時効は以下の通りです。

  • 「不貞行為があったこと」と「不倫相手が誰か」を知ったときから3年
  • 不貞行為の日から20年

いくら支払うべきか?

前のパートでは慰謝料の支払い義務が発生する要件にスポットを当てました。では、支払い義務があるとして、その金額は相手配偶者の要求に従わなければならないのか?というと、それは別問題です。
ここからは慰謝料の金額についてお伝えします。

不倫慰謝料の相場

過去の裁判における慰謝料の相場をご紹介します。

※この相場とは、弊所が調査した310件の裁判例を様々な要素で分類し、要素ごとに慰謝料の平均額を示したものです。弊所へのご依頼またはその他の手段によって合意できる慰謝料額を示すものではありません。また、弊所が調査していない裁判例についてはこの相場に反映されません。

不倫が始まるまでの婚姻期間 相場
5年未満 151万円
5~10年 160万円
10~20年 166万円
20年以上 154万円
婚姻前に交際開始 130万円
不倫期間 相場
1年未満 148万円
1~3年 155万円
3年以上 176万円
不倫発覚後の婚姻関係 相場
離婚 162万円
別居 164万円
離婚/別居以外 148万円
特徴 相場
枕営業 95万円
肉体関係は1回 119万円
会う頻度が低い 109万円
不倫によって妊娠 188万円
不倫相手と同居 187万円
自宅に連れ込んだ 177万円
夫婦に未成年・未成熟の子あり 165万円
子どもと不倫相手に面識がある 176万円
既婚者だと知った後も不倫関係を継続 133万円
発覚後も不倫関係を継続 178万円
不倫相手が嘘をついている 173万円

相場検索ツール

上記の表では単一の要素ごとに慰謝料の相場をご紹介しました。では、複数の要素に該当する場合はどうなるのか?というと、相場は大きく上下する可能性があります。

例えば、「不倫が始まるまでの婚姻期間が10~20年」の相場は166万円でしたが、ここに「不倫期間が1年未満」という条件を加えると153万円。さらに「発覚後も不倫関係を継続」した裁判例のみに絞り込むと、184万円となりました。

このように、複数の要素で絞り込んで相場を調べるには、以下の相場検索ツールをご利用ください。ご相談者様の交際の実態に近い裁判例が見つかる可能性があります。

求償

慰謝料を支払った後、その金額の一部または全部を交際相手に請求することができる場合があります。このような請求を求償といいます。

そもそも不倫の慰謝料というのは、不倫をした当事者(ご相談者様と交際相手)2人分の慰謝料であるのが原則です。では、相手配偶者に「私は自分の分だけ支払うから、あなたの配偶者が支払うべき分はそっちに請求して」と求めることができるのか?というと、これは法律上できません。

ただし2人分の慰謝料を支払った後、交際相手に対して「あなたの分を代わりに支払ったから返して」と求償することはできます。具体的には、100万円の慰謝料を支払った場合、交際相手に対して「あなたの負担分(例えば50万円)を私に返して」と求めることができるのです。

ところで、相手配偶者の目線に立つと、離婚しない場合、慰謝料が支払われた後に配偶者が求償されるため、せっかく入ってきた慰謝料が配偶者の負担分として出て行ってしまうことになります。さらに、慰謝料が支払われたことで一連のトラブルは解決したと思っていたところ、次は求償の話し合いが始まってしまうわけです。

つまり相手配偶者には「求償しないでほしい」と考える動機があり得るため、そこで「求償しない代わりに慰謝料を減額してくれないか」という交渉が生まれることになります。

※相手夫婦が離婚した場合や、離婚していなくても、夫婦の財布が別で相手配偶者が求償に関心がない場合などはこれに当てはまりません。

初回相談無料|お気軽にご連絡ください。

相談料は初回無料です。不倫の慰謝料を請求された方はお気軽にご連絡ください。

幣事務所のご紹介

幣事務所は「慰謝料をできるだけ減額したい」「追加費用の心配をしたくない」という方に特に適しています。その理由として、幣事務所では原則として、裁判をする場合の追加費用を頂戴していません。

弁護士の一般的な費用体系には、裁判をする場合の追加費用(追加着手金や日当)が設けられています。そのため、交渉で金額に折り合いがつかず相手配偶者に裁判を起こされた場合は、別途費用が発生します。

この点、弊事務所では原則として追加費用は発生しません。つまり「裁判になると弁護士費用が増えるから、裁判を起こされないように…」という理由で慰謝料の金額について妥協する必要がないということです。「慰謝料をできるだけ減額したい」「追加費用の心配をしたくない」というご希望に合う費用体系となっています。

※交通費や郵券、印紙などの諸経費は実費を頂戴します
※遠方への出張については日当を頂戴する可能性があります

弊所の弁護士費用について詳しくは以下のページをご覧ください。

慰謝料減額の弁護士費用

この記事の著者

弁護士法人えん

代表弁護士吉村歩

大阪弁護士会所属 登録番号55054

関連する記事